2020.10.7
経済・ビジネス

富裕層の資産管理に欠かせない「バランスシート・アプローチ」とは

(写真=BullRun/stock.adobe.com)
(写真=BullRun/stock.adobe.com)
バランスシート(貸借対照表)は、資産・負債・純資産などを一覧化したものです。これは会社の経営に欠かせない存在ですが、富裕層にとっても「個人(人生)のバランスシート」があると資産管理の精度が高まります。本記事では「なぜ個人のバランスシートが重要なのか」「これを資産管理にどう役立てればよいのか」について解説します。

企業と個人のバランスシートはどこが違うのか?

「個人のバランスシート」を作成して資産管理を進めたり改善したりする手法は、バランスシート・アプローチといわれプライベートバンクなどでも採用されています。具体的には、資産や負債の状況を把握するためのB/S(貸借対照表)と、これに紐付くお金の出入りを記録するP/L(損益計算書)を作成して個人資産を可視化していくものです。

しかし個人資産を管理するためのB/SとP/Lは、会社のものとは違って税務署に出すわけではありません。そのためその人が分かりやすいフォーマットで作成されていればよいでしょう。また確定申告や決算のための資料ではないため、作成するスパンも「1ヵ月ごと」「隔月」「クォーターごと」などその人が使い勝手のよいスパンで問題ありません。

富裕層にバランスシート・アプローチが必要な理由とは

富裕層にとってなぜバランスシート・アプローチが必要なのでしょうか。なぜなら資産総額が多いとたくさんの種類の資産に分散するケースが多いからです。そのため本人でさえも「リアルタイムの資産総額」「資産の種類の把握」などがしにくくなります。資産はたくさんあることは間違いないけれど、中身はブラックボックスということも珍しくありません。

まずこの状況を可視化するためにバランスシートが必要です。また資産がブラックボックスであれば資産管理の改善もしようがありませんが、可視化されることで問題点が明確になって改善が容易になります。

B/SとP/Lを作成するといったい何がわかるのか?

ここまでの内容で「バランスシート・アプローチとは何か」「富裕層にとってバランスシート・アプローチが必要な理由」については理解できたのではないでしょうか。次に個人用のB/SとP/Lの基本構成について紹介していきます。法人用のB/SやP/Lと概念自体は同じです。

個人用のB/S(貸借対照表)でわかること

B/Sを通して「プラスの資産をどれくらい持っているのか」「負債がどれくらいあるか」「プラスの資産から負債を差し引いた純資産がどれくらいあるか」を可視化できます。端的にいえば個人用のB/Sでは現時点の資産状況を確認することが可能です。

個人用のP/L(損益計算書)で分かること

P/Lを通して「どれくらい収益をあげてきたか」「費用をどれくらい使ったか」「その結果、いくら利益が残ったか」を可視化できます。端的にいえば個人用のP/Lではある期間の利益(または損失)を確認することが可能です。

B/SとP/Lは資産形成で一体化している

ここで注意したいのは、B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)が独立して存在しているわけではないということです。それを示したのがこちらの図です。P/Lの利益からB/Sの純資産に流れる矢印に注目してみましょう。
出典:「富裕層・経営者営業大全」株式会社ZUU編著・冨田和成監修

上記の図で分かる通り、P/Lの収益から費用を差し引いた利益が積み重なってB/Sの資産となり最終的に純資産に反映されています。P/Lの利益がB/Sの新たな資産となり、その資産が新たにP/Lの収入を増やすのです。その結果さらに利益が増えていくのが一連の流れになります。よくいわれる富から富が生まれる流れも可視化すると分かりやすくなるでしょう。

個人用のバランスシートは誰が作成するべきなのか?

では、この個人用のバランスシートは誰が作成するのでしょうか。確定申告や決算用のバランスシートであれば税理士に作成してもらうのが一般的です。しかし個人用のバランスシートは、自分で資産内容やお金の流れがつかめればよいため、自分や金融機関の担当者など誰が作っても問題ありません。具体的な作成方法としては、エクセルを用いたり簡単なメモ書きレベルであったりしても構わないでしょう。

バランスシートによる改善(アプローチ)の一例

バランスシート・アプローチは、B/SとP/Lを作成することが目的ではありません。各指標を基に資産管理を改善していくことが目的です。この改善方法(アプローチ)は、資産状況・年齢・職業・家族構成、そして何よりもその人がどんな理想を目指すのかで変わってきます。これらを踏まえたうえでアプローチの一例を見ていきましょう。

日本人の富裕層のよくあるパターンは、現金(預貯金)に資産が偏っていることです。これはもともとの国民性もあるでしょうし、金利が高かったバブル時代の名残も影響しているかもしれません。B/SとP/Lを作成してみて現金の比重が高い場合は、インフレリスクや相続に備えて例えば一等地の不動産を所有するといった改善ができます。

また逆に不動産を多く所有しすぎていてローン残債(債務)が膨らみすぎていたり相続税資金が足りなくなりそうな場合は「一部を売却する」という改善もできるでしょう。「このような資産はあるけれど現金が足りない」というバランスシートは、中小企業のオーナーにありがちなパターンです。資産の大半を自社株と不動産が占めていていざ相続が発生したら家族に負担がかかります。

不動産で相続税評価額を引き下げつつも現金をストックする努力が必要でしょう。もちろんこういった判断は一人では行いにくい面もあるため、顧問税理士や懇意にしている金融機関や不動産会社の担当者などとバランスシートをベースに話し合っていくのが賢明です。

「人的資本」という無形の資産に注目が集まっている

ここまで見てきたのは伝統的な個人のバランスシートの考え方です。最近では「人生100年時代」の到来によって個人のバランスシートの新しい概念も広がっています。最後にこの点についても紹介します。一般的なバランスシートに網羅されているのは、現金や有価証券などの「金融資本」、不動産・宝飾品などの「固定資本」などでした。

最近では、これらに加えて「人的資本」にも注目が集まっています。人的資本とは具体的に知識・経験・スキル・信用力・人脈・健康などのことです。これまでは利益や純資産の源泉は「金融資本」や「固定資本」と考えられてきました。しかし「人的資本」も利益に大きく貢献する存在としてフォーカスされています。

例えば「金融や不動産の知識という人的資本をもとに投資をしてリターンを生み出す」「心身ともに健康という人的資本で長く安定した労働収入を生み続ける」といった具合です。また「影響力のあるYouTuberが登録者数を武器に物販ビジネスをする」といった流れも人的資本に含まれるでしょう。ただ人的資本には、金融資本や固定資本のように数値化しにくいウィークポイントがありました。

しかし最近ではデジタル化が進みその人の信用力をスコア化して可視化したり、SNSのフォロワー数などで人脈が可視化されたりといった変化が起きています。このように人的資本の可視化が進む中、その比重はますます高まっていくことが予想されます。人的資本を含めて自分のバランスシートを定期的に可視化し、理想的な内容に改善していくことで自分や家族の人生をより充実させていきましょう。

参考文献:「富裕層・経営者営業大全」株式会社ZUU編著・冨田和成監修


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