2018.12.27
インタビュー

「2019年不動産マーケット」、業界エキスパートが注目する3つのキーワード

国内・グローバルの情勢が混迷している昨今。2019年以降の不動産マーケットの動向が読みにくいという声も目立ちます。今回は、そんな先行きが不透明な状況の中で投資家に向けて、不動産のエキスパートである野村不動産アーバンネットの流通事業本部 執行役員である大野伸二さんに「2019年の不動産マーケットを読む」をテーマにお話を伺いました。

キーワード1「消費税増税」 影響はカテゴリーによって二分される

━━2019年の不動産マーケットは不透明という声も多いように感じます。さまざまな要因がある中で、重要となるキーワードはなんでしょうか。

2019年の不動産マーケットを読み解く上で、重要なキーワードはいくつかあります。やはり皆さんが一番気にされているのは「消費税増税」でしょう。2019年10月より消費税が8%から10%に上がりますが、不動産マーケットへの影響では「影響の出やすいカテゴリー」と「影響が限定的なカテゴリー」に二分されることが予想されます。

消費税増税の影響が出やすいのは「一般的な新築住宅」のカテゴリーです。これに対して、「中古住宅」のカテゴリーは、限定的な影響であると私は予測しています。

消費税は土地部分にはかからず、建物部分にかかります。これを考慮すると、新築物件に関しては増税について気をつけなければならない部分があります。一方、中古物件の売買仲介で考えた場合、売り主が法人であれば建物に消費税がかかりますが、売り主が個人の場合は建物の消費税はかかりません。

さらにいえば、私たちが普段取り扱っているような都心のハイエンド物件は、影響が極めて限定的だと予測されます。

その理由については、少々説明が必要です。不動産の価値を形成する3要素は、「場所・モノ・お金」だと考えています。「場所」とは立地、「モノ」とは建築、「お金」とは賃貸に出した際に、収益・利回りがどの程度見込めるかということです。

資産家や富裕層の多くは、ご自身がお住まいになる、もしくはセカンドルームとして物件を購入される際も、「収益力」の部分を必ず重要視されます。具体的に言うと、対象物件のサイズ・間取・デザイン・共有部などが賃貸マーケットのトレンドに合っているかどうかです。

そのため、消費税増税のような要素は、優先順位でいえば下位になってきます。こういった背景があるので、都心のハイエンドな物件、特に立地に優れた希少性の高い物件については、増税をきっかけにマーケットが冷え込む、という事態は危惧していません。

━━現在の不動産マーケットは価格が上がりきっているため、今後価格が下がることが予想されています。この点はいかがでしょうか。

そういう面はあると思います。しかしこれは、地方や郊外の人口減少などで需要の低下がみられるエリアで価格が下がっていき、都心などの人気エリアについては引き続き需要が続くと見ていいでしょう。中には、希少性の高いヒルトップ、パークサイドの物件などはさらに好調と見る向きもあります。

新築高級マンションを購入されるファーストバイヤーの方は今までどおり有利です。一時的に居住した後や一定期間賃貸に出した後に、キャピタルゲインを狙って売却することによって非常に大きな利益を得る場合があります。ただ、このような場合、対象が新築不動産となるため、増税による影響を多少なりとも受ける事になるかもしれません。なぜ、新築マンションは増税の影響を受けるかというと、都心のハイエンド物件は建物価格が高く設定されているからです。

また、不動産マーケットには新築ばかりがあふれている訳ではありません。新築物件よりも中古物件マーケットの方が流通量は多いので、都心などの人気エリアについてはマーケット価格が大きく下がる影響は少なく、2019年もある程度の平行線をたどっていくというのが現時点の予想です。

キーワード2 「東京オリンピック後」 閉幕後もビッグプロジェクトは続く

東京・晴海
東京・晴海
━━経済系のメディアでは、東京オリンピック後を意識してそろそろ都内のマンション価格が下がるのでは? という論調も目立ちます。この点いかがでしょうか。

そうですね。2019年の不動産マーケットを読み解くキーワードとしては「東京オリンピック後のマーケット予測」も外せません。

東京オリンピック後のマーケットというと、私たち野村不動産グループも参画している選手村の跡地の活用事業『HARUMI FLAG』をはじめ、供給戸数の多い不動産の影響がどう出るかが鍵になります。

比較的、リーズナブルな物件が一気に増加することで「マンション相場が下落するのでは?」と懸念されている方も多いと思います。たしかにこれは、マンション価格を維持したいとお考えの方々にとってはマイナス材料の面もありますが、それよりも、東京オリンピック後のプラス材料にも目を向けるべきでしょう。

例えば、全国規模で考えますと、2025年の「大阪万博開催」、2027年の「リニア中央新幹線開通(予定)」と国を挙げてのビッグプロジェクトが続きます。マーケットというのは、消費者のマインドも大きく影響します。今回のように、東京オリンピックからはじまるビッグプロジェクトが続くことで、不動産のみならず、消費者の購買意欲が高まる方向に動くと予測することもできます。

また、東京オリンピック開催だけが、現在の不動産マーケットを押し上げた訳ではありません。「低金利」も大きく影響を及ぼしています。この低金利が今後も続くと想定した前提で、さらにビッグプロジェクトが続くことを考えれば「都心の不動産の乱高下は発生しにくい」という見方もできるでしょう。

一方、視点を広げて郊外や地方に住んでいる方々からの側面で都心不動産マーケットを見た場合、購入や投資のチャンスが増えるとも言える訳です。弊社へのお問い合わせの傾向でいいますと、今後将来的に郊外や地方の価値が下落していく可能性が高い資産、特に利用していない資産の「組み替えを行いたい」という要望も増えています。

その中には相続対策を意識されている方も目立ちます。特に、地方在住の資産家・富裕層の方が首都圏(都心)のタワーマンションを購入して、相続税評価の圧縮をはかりたいというニーズは強いです。このような方々は、短期的な物件価格の変動よりも「節税メリット」に関心があることが多いです。

キーワード3「不可抗力」 地震リスクをどう考えるべきか

━━ここまでお聞きしてきた「消費税増税」「東京オリンピック後」のほかに、2019年以降の不動産マーケットを読み解く上で、重要なキーワードはありますか。

2019年の不動産マーケットを読み解く3つ目のキーワードは、「不可抗力」です。不動産市場は、比較的価格が安定していても、なにかの事件・事象が起きたときに大幅に下落するという特徴があります。具体的な例をあげると、リーマンショックが不可抗力に該当します。実際に、リーマンショックで大幅下落した物件は多かったですし、多くのの不動産会社が倒産しました。

最近の不可抗力リスクとして警戒されているのは、「首都直下地震」や「南海トラフ地震」です。これらの大地震は起きないで欲しいと切に願いますが、仮に発生した時に、どんな状況になるかもイメージしておくべきでしょう。参考になるのは、2011年の東日本大震災です。いうまでもなく、人・物に未曾有の被害が出ました。結果的には、このときの不動産マーケットはどうであったかというと、実はそこまで長く低迷しませんでした。
もちろん、不動産が集中する首都圏・大阪・名古屋で大地震が発生したとすると、東日本大震災以上の影響が出る可能性も考慮すべきではありますが。

━━ありがとうございました。3つのキーワード「消費税増税」「東京オリンピック後」「不可抗力」で、2019年以降のマーケットの展望が整理できた、という方は多いのではないでしょうか。

補足としては、株価も不動産マーケットに影響を与えうる要素です。日本の株価については、海外の機関投資家が非常に大きな影響力を持っています。トランプ政権の迷走・中国経済の減速・ブレグジットによる悪影響・中東情勢の混乱など海外リスクも気になります。こうした側面による円高リスクも影響する可能性があります。2万円を超えている間はいいでしょうが、1万円台、もしくは1万円を切ってくるような事態に万一なれば、不動産マーケットの動きが低迷する可能性は十分にあります。

不動産をお持ちの方は、金融資産もお持ちの方が多いです。株価下落により金融資産に影響がでることで、資産家・投資家の方達のマインドに影響し、不動産の買い替えや追加購入をやめるなど、消極的になることが予想されます。そうすると、マーケットが冷え込むということにつながりかねません。この点は、注意深く見ていきたい要素です。

市場分析では、外国人人口の増加、生産年齢人口なども見逃せない

━━2019年1月に開催の『資産運用EXPO』で登壇されるそうですね。テーマは今回の取材テーマと同じ「2019年の不動産マーケット」とのことですが、今回伺ったようなことが直接お聞きできるわけですね。

その通りです。不動産マーケットについて興味がある方は、ぜひ、ご期待ください。
本日は取材時間が限られていたため、2019年の不動産マーケットについて、かなり足早にお話させていただきました。2019年1月24日(木)~26日(土)、東京ビッグサイトで開催される『資産運用EXPO』では、豊富なデータをもとに、さらにくわしく「2019年不動産市況のトレンドとマーケット」について解説いたします。

具体的には、今回お話しした内容以外にも、外国人人口の増加と不動産マーケットの関連性、さらには、生産年齢人口をもとにした分析など、これからの不動産市況を理解する上で役立つ情報をご用意しています。皆様の資産運用の一助になればと考えております。登壇時間などくわしい内容は、下記の公式サイトでご確認いただけますと幸いです。

>>『資産運用EXPO』公式サイト
 

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