2019.5.10
インタビュー

【ベテランコンサルの事例から学ぶ】相続した空き家をスムーズに売却、賃貸転用する方法。悪質空き家のレッテルを貼られる前に行動を!

(写真=野村不動産アーバンネット ソリューション営業二部 部長の藤堂成人さん)
(写真=野村不動産アーバンネット ソリューション営業二部 部長の藤堂成人さん)
相続した空き家をどうにかしたいが、具体的にどうしたらいいか分からない……空き家問題が深刻化するなか、多くの方がこのようなお悩みを抱えているはずです。どのようにすれば売却や賃貸転用が実現できるかを実際に空き家問題の相談を受け、解決にかかわってきた野村不動産アーバンネット ソリューション営業二部 部長の藤堂成人さんにお話をうかがいます。

空き家問題は地方だけでなく都市部でも深刻化している

━━空き家の相続というのは深刻な社会問題になりつつあります。そもそも空き家とは、どのような状況で発生するのでしょうか。また、どのような場合に処分・活用についてご相談がありますか。

日本の法制度において、不動産は「所有権を放棄して捨てる」ことができません。車は廃車にして登録抹消することができますし、家電製品はリサイクル法で決まった料金を支払えば廃棄することが可能です。しかし、不動産の場合は所有権を取得したら新たに相続したり、売却したりしない限り、ずっとその人のものです。途中で放棄することができません。

また、日本の税制上、住宅関連にはさまざまな優遇措置が講じられていますが、その最たるものが住宅の固定資産税です。更地ではなく、土地の上に住宅が建っているだけで固定資産税は最大で6分の1にまで減税されます。(※1)これは、どんなに古い建物でも適用されます。それが、建物を解体して更地にした途端、固定資産税が一気に6倍へと跳ね上がるのです。これが、老朽化した建物が空き家のまま放置される大きな原因の1つとなっています。

※1:土地・住宅の固定資産税について詳しくはこちらをご確認ください。

今までお話してきた事柄が原因で空き家は増え続けています。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年の全国の総住宅数は6,063万戸なのに対し、820万戸の空き家があります。住宅全体に対して占める空き家の割合は実に13.5%です。

地方都市の問題と捉えられることもある空き家問題ですが、野村総合研究所によれば、団塊の世代が70代にさしかかり、ますます高齢化が加速するなか、この割合は都市部にも広がり2033年には空き家率は30%超の約2,167万戸になると予測されています。これは、日本の住宅のおよそ3軒に1軒が空き家となる計算です。

そんななかで、地方の限界集落にある実家や、修繕計画に問題のある老朽化したマンションを相続し、固定資産税を考慮して建物を残しているケースは相当数あります。実際には居住者がいないにもかかわらず、保有しているだけで改修費や納税費用が、相続人にとってかなりの負担となっている状況も珍しくありません。こういったことにお悩みの方々に空き家の活用方法や処分方法についてご相談いただくケースが多くあります。

空き家を相続した場合は、3,000万円特別控除を活用して処分を

(写真=PIXTA)
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━━「空き家を売却する」ことをゴールにした場合、「現況で売却する」「更地にして売却する」という選択肢がありますね。どのような条件で判断すればよいでしょうか。

これについては、「物件の状況」と「納税負担に応じた判断」が必要です。まず、「物件の条件」についてですが、近年は建物の建築費の高止まりとあわせて解体費用も高額な状況が続いています。たとえば、延床面積が60坪程度の古い木造戸建住宅であれば、諸条件によって金額は変わるものの、解体費用はざっと300万円前後でしょう。

ただし、アスベストが含まれているような場合、解体費用はさらに高額となるので建売業者などに対して事業用地として現況有姿による売買をおすすめします。この場合、土地建物にかかわる瑕疵担保責任はすべて買い主側が負うことを条件とする免責の取引が望ましいでしょう。ただし、平成28年度の税制改正により「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が創設されました。

適用要件が多い制度ですが、たとえば次のような内容があります。「相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が、当該家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む)又は取壊し後の土地を譲渡した場合には、当該家屋又は土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除する」というものです。

詳細な計算式としては、このようになります。

・譲渡所得=譲渡価額-取得費(譲渡価額×5%)-譲渡費用(除却費用等)-特別控除3,000万円

この特例を適用する場合、建物を現況のまま譲渡するには耐震基準を満たしていることが条件です。そのため、通常は売り主の責任と費用負担で取り壊しをした後、土地を売却します。こういった条件を考慮し、立地条件が良く需要のある住宅地の場合には、この特例を利用して手残りを確保する必要があることから、売り主が建物を解体して除却し、更地として売買することを推奨します。

━━3,000万円特別控除は、どのような問題を抱える方に適したものでしょうか。
 
(写真=PIXTA)
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2015年5月に「空き家対策特別措置法」が施行され、空き家の放置に対する行政の目は一層厳しくなっています。具体的にお話しすると、相続した土地建物を利用することなく放置した結果、特定空き家に指定されてしまう可能性が出てきます。特定空き家とは、次のような土地・建物のことです。

1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

住宅の躯体である柱や屋根、外壁、基礎部分などに問題および、倒壊の可能性があり、放置すると大きなトラブルになる可能性のある状態です。

2.そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

空き家を放置すると、不法投棄や排水口の詰まりなどが原因で衛生上有害なものを発生させたりする可能性もあり、衛生面において周辺住民に影響を及ぼす可能性がある場合です。

3.適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

屋根や外壁が外見上大きく荒れている、あるいは、庭が荒れ放題で植栽が手入れされていなかったり、雑草が放置されて伸び放題であったりすると、周囲の景観を著しく損ねることにつながります。

4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

空き家を放置すると、放火や空き巣といった悪質な犯罪の温床になることが考えられます。したがって、周囲の治安を損ねる可能性があります。

これらの要件の状態にあると認められることにより、特定空き家に指定された場合には、たとえ建物が建っていたとしても固定資産税が更地と同様6倍になってしまいます。(※1を参照)市区町村は所有者に対して是正命令を出すこととなり、家屋倒壊の危険性が高いときは「行政代執行」により、強制的に家屋は取り壊され除去されてしまい、その費用だけ請求が回ってくるのです。

こういったことに発展しないよう、相続した不動産が、上記の状態にあると認められる場合には早々に売却して3,000万円特別控除を利用するのが得策と考えられます。また、特定空き家への指定は、近隣住民からの苦情や陳情がきっかけになるようです。もしも売却するか悩んでいて、その期間が長くなるという場合には、外観を整え、植木を剪定し、キレイな状態を維持することで苦情に発展するリスクを抑えられると考えられます。

空き家の賃貸転用の最大のハードル「リフォーム費」を解決する方法

(写真=野村不動産アーバンネット ソリューション営業二部 部長の藤堂成人さん)
━━ここまでのお話をうかがっていて、ほとんどの方が更地にして売却することを選択されると思います。しかし、空き家を貸すとした場合、どのような物件であれば賃貸に見合っていると言えますか。

相続した不動産が木造戸建て住宅の場合、締め切った状態で風が通らない環境だと、あっという間に湿気がたまって荒廃が進みます。空き家に対して想い入れや故人の意向があり、手放すことに抵抗がある場合、空き家の状態で放置するケースが多い傾向です。朽廃した家屋を元に戻すのは相当の労力と費用がかかるため、放置するよりは賃貸するという選択肢がよいでしょう。

ただし、建物を人に貸した場合、オーナーとしてさまざまな責任を負わなければなりません。マンションやアパートであれば、管理会社に管理料を支払って大半の業務を委託することもできますが、1軒の戸建住宅なら、費用対効果を考えて自主管理の選択もあるでしょう。とはいえ、賃貸物件を運用するには、さまざまなコストと手間がかかることは理解しておくべきでしょう。

まず、初期段階では支出しなければならないリフォーム費用がかかります。さらに、運営には、維持管理するための諸費用、納税の負担、賃借人との人間関係の構築など、賃貸のオーナーの責務は非常に多いです。こういったことを考慮すると時間的に余力のない方は、思い切って売却する選択が賢明です。そもそも、高額な家賃収入が見込める一等地の高級住宅街であれば話は別ですが、相続人自身が住みたいと思わない立地では賃貸転用は慎重に考えるべきでしょう。

また、「慣れないオーナー業でストレスをためる」といった結果になることを故人は決して望んでいないはずです。これらの可能性を加味して、ご自身の労力に見合った賃貸料が見込めるかをシミュレーションしてみる……それからアクションを始めるのがいいでしょう。

━━諸条件を加味した結果、リフォーム、もしくは更地にする際に、費用が足りずに放置するしかない、という人もいると思います。これらの費用捻出は、どのように行えばいいのでしょうか。

まず、賃貸転用などに伴うリフォーム費用の場合、相続財産に含まれる不動産の多くは、マイホーム取得が念願だった中高年世代所有のものが多数です。そのため、住宅ローンの残債はほぼ残っておらず、相続した土地と建物を担保に、リフォーム費用程度の融資を受けることが可能なケースも多いでしょう。また、更地の費用の場合は、解体と売却を組み合わせて調整するのがスムーズです。

たとえば、売却するのであれば現況のまま売買し、買い主に解体を委ねるのが一般的ですが、すでにご説明した通り、空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除を利用するには、売り主が建物を取り壊す必要があります。そこで、たとえば売買において買い主と協議し、売り主の名義で建物を解体、売買価格のなかで解体費用を精算する方法をコーディネートするといった流れです。

野村不動産アーバンネットにご相談いただければ、ご提案することもできます。もちろん、今お話しした流れは一例です。ベストな選択は、買い主や売り主の状況によって複雑に変化しますので、それに合ったご提案をいたします。空き家問題では、相続した不動産をどのように活用すればいいのかを包括的に判断することが大切です。

せっかく相続した不動産ですから、「負動産」にしない気配りが必要で、その配慮ができない方は早々に譲渡するのが賢明であると考えられます。

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