2019.7.8
インタビュー

エコノミスト・崔真淑さんに聞く 効率的×成果の出せる情報収集術

(写真=Wealth Lounge編集部)
(写真=Wealth Lounge編集部)
たくさんのテレビやラジオのレギュラーを抱えると共に、東証一部上場企業の社外取締役、人工知能開発関連会社の顧問としても活躍されるエコノミストの崔 真淑(さい ますみ)さん。2019年4月に上梓された「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」も話題です。

日々をお忙しく過ごされる中、経済関連情報をどのように効率的に収集されているのでしょうか。成果を出すためのコツをお聞きします。

みんなが知らないことを追求することを重視している

━━ご多忙なスケジュールの中で、情報収集にあてる時間をどのようにつくられているのでしょうか。

起床直後の時間と、地下鉄に乗っている間に新聞の見出しをチェックするところからスタートします。いつも読んでいるのは日経新聞とフィナンシャル・タイムズの2紙で、いずれも電子版と紙媒体どちらも読みます。

テレビの仕事をするときは、局で待機している間に大手3紙なども同じように見出しに目を通しますね。

なぜ見出しだけ先にチェックするかというと、世間ではどのようなニュースが注目されているか、というのが総体的に分かるからです。

━━2紙以外にも、毎日必ずチェックする媒体はありますか。

もちろん、ほかにも書籍や論文、ネットニュースなども見ますが、新聞で必ずチェックするのはこの2紙だけです。もっと社会のことを知るために一般紙も毎日チェックするという考え方もあるかもしれませんが、私の場合は経済関連以外は見出しチェックだけにとどめています。

なぜなら、情報の専門性に重きを置いているからです。1日のうちで、情報のインプットに使用できる時間は限られています。みんなが知っていることに時間を割くよりも、みんなが知らないことを追求するのに時間をあてることに重きを置いています。

リアルな新聞は「紙面全体の割り付けまで含めて読む」

━━最近では新聞よりもネットニュースの方が早く情報を知ることができると、新聞購読していない人も多数います。

そういうスタンスもあるかと思います。ただ、新聞は情報の正誤に気をつかう媒体です。一方、最近ではニュースをいろいろなかたちでまとめているメディアがWEB上に多数存在しますが、これらが情報の正しさにどれだけ重きを置いているかというのは分かりません。

アクセスを集めるために、内容の確認がとれていないことをいち早く掲載することに躊躇しないメディアもあるかもしれません。あるいは、そもそもそのメディアが発信する情報の正しさが担保されていないこともあるかもしれません。

ネットメディアと新聞の関係性で言えば、たとえばネットニュースなどで早めに知った情報の正誤の確認に新聞を使うといった考え方はあるかもしれませんね。

また、最近のネットニュースでは、タイトルから本文まで同じデザインフォーマットで掲載されていますよね。しかし、リアルな新聞紙面であれば、見出しや写真の大きさ、本文の量など、新聞社側の意図によって掲載面積が変わります。個人的にはこの部分をおもしろく感じています。

たとえば、新聞社が読者に一番に伝えたいネタなので一面トップに掲載ということもあれば、どこかの団体の圧力や社会的関心事の影響で本来ならもっと大きく扱ってもいいのに1面から外れている、ということもあります。「なぜこのニュースはこんなに扱いが大きいのか」という部分に、掲載されている内容よりも大切なことが隠れていたりもします。

また、扱いが小さいトピックでも、逆に考えればまだあまり注目されていない、ビジネスにつながる貴重な情報かもしれない、と読み解くことも可能です。

そのため、新聞を読むときは内容だけではなく、「紙面全体の割り付けまで含めて読む」ようにしています。

ほかには、ツイッターでの情報収集も重要です。研究者や政治家、新聞記者などをフォローして、彼らがみんなと共有したい事柄はどんな内容なのかをチェックしています。たとえば、フォローしている研究者が同時に何人も同じ話題を取り上げていれば、その項目に関してはより深掘りする必要がありそうだと判断することもできますね。

電子媒体よりも、紙媒体の方が覚えやすい理由

(写真=Wealth Lounge編集部)

━━朝以外に大切にされている情報収集の習慣はありますか。

日中から夜にかけては、書籍やファイナンス系の論文を読む時間に充てています。ニュースとちがって文章量がある、もしくはある程度読み進めないと結論が見えないことが多い媒体なので、できるだけ時間を割けるタイミングで読み始めます。

私は、知識を取り入れる脳の働きは短距離走と長距離走に似ていると考えています。朝や移動時間などに断片的に情報を仕入れるのは、短い時間で集中力を発揮する短距離走です。

しかし、文章量や情報量の多い書籍や論文を読むには、長距離走の考え方が必要です。自身の頭の中に情報を入れるだけではなくて、書いてある内容に合わせてすでに知識として持っている情報と関連づけ、新たな知識を自分の中に形作りながら進んでいくようなイメージです。

そのため時間も体力も必要になりますが、この長距離の情報収集がしっかりしていると、核となる情報を多く有することができます。これにより、短距離の情報収集をしたときに大本の情報に肉付けする程度になるので、すぐに覚えることができるようになるでしょう。

最近私はいろいろなジャンルのお仕事をいただいていますが、共通するのは「ファイナンス」というキーワードです。そのため、ファイナンスに絞って情報収集を続けているので、別のテーマのニュースなどを見たときにも、ファイナンスに関連した情報として覚えることができます。

あとは、書籍であれば、電子書籍ではなく紙媒体で読むことが多いですね。大事なところにラインを引く、後で読み返すために目印をつけるといったことは電子媒体でもできますが、紙のほうがやりやすいと感じています。

そしてまた、紙のほうが情報が頭に入るんですね。これは、電子書籍の場合は視覚のみ、紙媒体の場合は視覚のほかに触覚など五感で感じるから覚えやすいのでは、と主張している方もいます。

そのため電子媒体で読んでみて、よりしっかり覚えたいという場合には紙で同じ本を購入することもあります。「本当に知りたいことは紙で読む」というのは皆さんにもぜひオススメしたいですね。

書籍と同じような考え方ですが、論文に関しては紙とPDFのどちらか、もしくは双方で読むことがほとんどです。

━━読まれている論文の傾向はありますか。

日本で話題になっている論文はあまり読みません。世界で認められている、最先端の論文だから読む価値があると考えています。そうするとほとんどの場合、執筆言語は英語になります。PDFの機能を使用して、分からない単語などを調べながら効率的に読み進めていきます。

あとは、気になる部分についてメモ代わりにツイッターでつぶやくことも重要でしょう。その際には、今後自分たちの生活に、そのトピックがどのような影響を与えるかについて、一言コメントも添えています。

自身の意見も交えて発信することで、より情報を整理した状態にすることができます。

━━ここまで個人で行える情報収集術についてお聞きしていました。ほかにも、リアルな人とのコミュニケーションから得る情報も大切にされていますか。

もちろんです。誰かと情報交換をするというのは、まったく違う見解なども聞くことができるので役にも立つし、楽しい時間です。

ただし、飲み会などを通して情報交換をすることはありません。お酒が入れば、せっかくの情報を忘れてしまったり、話に集中できなくなってしまったりするので、あまり好ましくないなと思っているからです。

むしろ、情報交換をしたい、意見を聞きたいと感じた人には、もっと直接的にクローズドな勉強会を開きます。こちらのほうが、先方もファイナンスのことに集中して話しができるので、無駄な時間を省くことができますよね。

このとき注意しているのは、お声がけした人にどのようなメリットを提供できるか、ということです。互いにとってメリットのある場でなければ、その後のお付き合いにも影響が出てしまうと思っています。

そして、なるべくSNSやブログなどで、ファイナンスに関する自分の意見や考えを発信するようにしています。これには、実際にお会いしたりお誘いをうけたりした際に、ミスマッチが起きないようにする効果もあります。

私がこういうジャンルが得意で、こういった情報をよく知っているというのを知ってもらわなければ、先方の求めることとズレが生じやすくなります。せっかくお時間を用意していただいても無駄になってしまいますからね。

実際、フェイスブックやツイッターを通してお仕事のご相談をいただくことも多々あります。専門的なことに特化して情報発信をしていくことで「ファイナンス専門の人だ」と理解してもらえているので、自分に合っていない仕事のジャンルがくることもないし、集まってくる情報もその分野に特化するため、非常に有意義に感じています。

━━最後に、今後経済にくわしくなりたいビジネスパーソンや成果を出したい投資家の方に情報収集の一番大事なコツをご教示いただけますか。

英語メディアに触れることをオススメします。具体的には、まだ和訳されていない、フィナンシャル・タイムズやブルームバーグ、ウォール・ストリート・ジャーナルなどです。

早い情報という意味では、こういった世界的に著名あるいは大手メディアの情報を、和訳されたり、日本の研究者が発信したりする前に収集したほうがいいでしょう。

さきほど挙げたメディアには、無料で読むことのできるコンテンツも多数あります。「英語が苦手で読めない」という人もいると思いますが、Google翻訳などの機能を活用するとかなりの精度で和訳してくれるので、非常に便利です。

まずは自身の知りたい情報の専門性を見極めて、正しい媒体で情報収集を行う。そうすることで、より効率的な動きができるようになるでしょう。

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