2019.9.17
ライフスタイル

ミスターラグビー平尾誠二 チームで結果を出すための人心掌握術

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
2019年9月20日~11月2日、全国12都市で開催されるラグビーワールドカップ。前回大会では全世界の40億人以上がテレビ放映を見た注目度の高い一大イベントです。開催国として日本の活躍が期待されますが、日本ラグビー界を象徴する人物が故・平尾誠二さん。選手としてはもちろん、傑出したリーダーとしても知られました。平尾さんはどのようなスタンスでメンバーの力を最大限に引き出したのでしょうか?

ラグビー日本選手権7連覇のリーダー 指導者としても知られる

4年に1度行われる15人制ラグビーの世界王者を決める祭典が「ラグビーワールドカップ」です。1987年に初めて開催され9回目となる2019年は日本が開催国ということで話題沸騰、上位進出が期待されています。注目が高まるワールドカップですが、ここで忘れることのできない人物が伝説のラガーマン、平尾誠二(1963~2016年)です。

ラグビーに少しでも興味があれば、この名前を知らない人はいないでしょう。伏見工業高校で高校ラグビー全国大会優勝を果たし、同志社大学では大学選手権3連覇の偉業を達成しました。今や伝説となった神戸製鋼でのラグビー日本選手権7連覇の快挙を通し、いつしか「ミスターラグビー」と呼ばれるようになりました。

しかし個人競技と違い、団体競技のラグビーでそこまでの成績が残せたのは、単に個人の技能や身体能力が突出していただけではないはずです。そこには平尾誠二流の人心掌握術があったのです。その人心掌握術を3つの視点から解き明かします。

平尾誠二さんの人心掌握術.1  ご本人の視点

平尾さんはあるインタビューの中で人員掌握術について「僕はマネジメントとは、『なんとかさせること』だと思っているんです」と語っています。この思いの背景にあるのは伏見工業高校時代の恩師・山口良治監督に試合中に言われた「平尾よ、なんとかしろ」という言葉だったそうです。なんとかしろという言葉の裏には「お前ならなんとかできる」という信頼や確信が込められているからです。そして、「残された時間でできることは何かと考え、それを順番にやってみる。ノーサイドの笛が鳴る瞬間に1点でも多く点を取っていればそれでいい」というシンプルな思考でチームを勝利に導いていったのでした。

「リーダーのセオリーや王道なんてない」というのが平尾さんの考え方です。平尾さんはリーダーとして、メンバーに「なんとかさせる」には2つの大事なポイントがあるとも語ります。

1.「リーダーは我慢の時間も必要だということをメンバーに伝えるべき」
「今はやる気を引き出しにくい時代。あまりに情報が多いので現実が見えてしまう」といいます。「その結果、自分はこの程度までと、あきらめの思いを抱いてしまう。まずはそうしたあきらめの空気を壊していかなくてはいけない」と平尾さんは力説します。たしかに大相撲でも土俵際で踏ん張って耐えられなければ逆転劇も起きないわけで、この平尾さんの指摘にはうなずけるものがあります。

2.「チーム内でコンセンサスを得られた目標にすること」
目標設定は、かないそうな夢にすることが大事で実力とかけ離れた目標ではやる気も起こりません。「現実感があって、頑張れば届きそうな夢なら、やる気が出てきますし、プランも具体的になります」。平尾さんのこの言葉は、ビジネスの世界でもそのまま生かせる金言といってよいのではないでしょうか。

平尾誠二さんの人心掌握術2. 山中伸弥博士の視点

平尾さんは、ノーベル賞受賞者である京都大学の山中伸弥博士とも親交がありました。2016年10月20日に53歳の若さで亡くなった平尾さんを偲ぶ会において、山中博士はスピーチの中で平尾さんの「人を叱るときの4つの心得」を紹介したそうです。4つの心得とは、以下のようなものになります。

1プレー(行動)は叱っても人格は責めない
2あとで必ずフォローする
3他人と比較しない
4長時間叱らない

山中博士はこの中で1と2が難しいといいます。「実践することが難しい一番の理由は、受け止め方の基準すべてが、叱られている相手の感じ方次第だからです」と分析しています。たしかに、こちらがプレーを叱ったと思っていても、叱る人の表情・口調・語気の強さなどの要素によって、相手はパワハラだと感じるかもしれません。

そのため、2の「あとで必ずフォローする」ことが重要なアフターケアになってくるわけです。そして山中博士は、平尾さんについて「この4つの心得を基本に置きつつ、選手一人ひとりがどんな捉え方をしているのかを常に観察していたはずです」と語っています。平尾さん自身は叱り方のポイントについて、「注意しなければいけないのは、叱るときは、状況をしっかり把握すること。部下が遅刻したら、それ自体は怒って当然ですが、なぜ遅刻したのかは聞いてやったほういい」と指摘しています。

平尾誠二さんの人心掌握術3 後輩視点

後輩たちはどのような視点で平尾さんを見ていたのでしょうか。元神戸製鋼スタンドオフの藪木宏之さんは平尾さんとのエピソードを次のように語っています。

「ある日平尾さんから『今日、早くグラウンドに来られるか』といわれ、来てグラウンドに出てみると、『タッチキックを蹴れ』と指示される。平尾さんがパスをして私が蹴るのを10分くらい繰り返したら、『俺とあまり変わらんな、分かったエエわ』ってそれだけで、何の説明もない。でもあとになってからいろんなことが分かるんです」(一部編集)

その理由は、1週間後に明らかになります。強力なライバルであるトヨタ自動車戦での先発出場が告げられたのです。しかも10番(ゲームメークとなる重要な位置)での大抜てきでした。10番未経験の藪木さんの起用は周りのチームメートが納得するかが心配でしたが、平尾さんは藪木さんの実力を確認したうえで、チームメートを納得させてくれたのでした。試合は43-18の快勝でした。

もう1点、藪木さんが印象的だったというのが、ある試合で珍しく平尾さんからきつく叱られたことです。パスでセオリーに反したプレーをした点を指摘され、「お前が今日やっていた動きは全部、逆や。パスせなあかんとこで、キックを蹴る。蹴らなあかんところで、自分で走る、もう最低や」と言われたのです。

しかしそのようなときでも「怒ってるわけちゃうで」と必ずフォローの言葉を欠かさなかったといいます。叱りつつも感情をそのままぶつけたり、人格否定をしたりしない……リーダーがこれを理解しているかどうかで、チームの結果は大きく変わりそうです。

過去のワールドカップでも平尾誠二は劇的勝利を演出した

ワールドカップが日本で行われる2019年、最後にエポックメイキングなエピソードを1つ挙げてみましょう。強豪が終結するワールドカップで、日本は第2回大会のジンバブエ戦(52-8)で記念すべき大会初勝利を挙げているのです。この1戦でも平尾さんが主将として中心的な活躍をし、チームの勝利に貢献したのでした。

ミスターラグビー、平尾誠二。今回紹介した人心掌握術の数々は、輝かしい戦績とともに、これからも語り継がれていくのではないでしょうか。願わくは今回の日本大会でチームが優秀な成績を残し、世界に日本ラグビーの名を高める結果となれば、平尾さんの功績に少しでも報いることになるのではないでしょうか。

参考文献
・RUGBY WORLD CUP JAPAN2019公式サイト
・講演.com スペシャルインタビュー平尾誠二
・財界新聞 ラグビー平尾誠二さんの「人を叱るときの4つの心得」
・読売新聞「RUGBY WORLD CUP 2019 日本大会 特集」

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